BOOK ARCHIVE — 絵本・童話

フェアリーテイルシリーズ

Logan Marshall 編 Favorite Fairy Tales(1917年)/パブリックドメイン挿絵

第一話

シンデレラ

むかしむかし、ある国に、心だけがきらきらしている娘がいました。名前はエラ。でも意地悪な継母と義姉たちは、いつも彼女を暖炉のそばで働かせていたので、みんなはいつしか「シンデレラ」と呼ぶようになりました。

エラは灰まみれでも、文句ひとつ言いませんでした。歌を歌いながら床を磨き、小鳥と話しながら洗い物をしました。

シンデレラのぼろ服がドレスに変わる — Logan Marshall 挿絵(1917年・パブリックドメイン)
挿絵 — Logan Marshall 編(1917年・パブリックドメイン)

ある日、お城から招待状が届きました。「王子様の舞踏会へ、国中の娘たちをご招待申し上げます」

継母と義姉たちは大喜びで支度をはじめ、エラには「あなたは留守番よ」と言い残して馬車に乗っていきました。

エラは一人、暖炉の前に座ってため息をつきました。するとそこへ——ぽわんと光が灯って、やさしいおばあさんが現れました。

庭のかぼちゃが立派な馬車になりました。ネズミが白馬に、トカゲが従者に。そしてエラのぼろぼろの服が、ため息が出るほど美しいドレスに変わりました。足には、ガラスの靴。

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「ただし、真夜中の鐘が鳴ったら帰ってきなさい。その前に、ね」

お城に着くと、誰もがエラに目を奪われました。王子様も、階段の上からエラを見て、そっと胸に手を当てました。二人はひと晩中踊りました。

でも——ゴーン、と鐘が鳴り始めました。エラは我に返って走り出しました。階段を駆け降りる拍子に、ガラスの靴が片方脱げてしまいましたが、振り返る時間はありません。

翌朝、王子様は国中を歩いてガラスの靴を探しました。そしてエラの足にそっと靴をはめたとき、靴はぴったりと合いました。

「あなたでした」と王子様は言いました。「はい」とエラは言いました。意地悪を返さない。それが、エラの一番の魔法でした。

第二話

いばら姫

王さまと王妃さまに、長い間待ち望まれた赤ちゃんが生まれました。薔薇の花びらのようなほっぺの女の子で、みんなはすぐに夢中になりました。

お祝いの宴に、国中の妖精たちが招かれました。「美しく育ちますように」「心やさしくなりますように」——妖精たちは次々と贈り物をしていきました。

いばら姫がはじめて見る塔 — Logan Marshall 挿絵(1917年・パブリックドメイン)
挿絵 — Logan Marshall 編(1917年・パブリックドメイン)

ところが宴のまっ最中、誰も招かなかった年老いた妖精が突然現れたのです。「この娘は、十五になったとき、糸巻き棒の針に指を刺されて——死ぬだろう」

まだ贈り物をしていなかった若い妖精が、こっそり近づいてきて言いました。「死ぬ、は変えられません。でも——眠り、に変えることならできます。百年の眠り。そして、愛のくちづけで目覚める眠りに」

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年月は流れ、姫は十五歳になりました。お城の古い塔で、糸巻き棒を見つけて触れた瞬間——姫は深い眠りに落ちました。茨が城を取り囲み、やがてお城は緑の壁の中に消えていきました。

百年が経ちました。ある王子様が、深い森の噂を聞き、茨をかき分けて進むと、眠ったままのお城がありました。

王子様はそっとひざまずいて、姫のほっぺに口づけをしました。姫がゆっくりと目を開けると、そこには見知らぬ王子様がいました。でも、姫はなぜか少しも怖くありませんでした。

「百年も待ってくれたの?」と姫は言いました。「ちょっと遅れてしまいました」と王子様は笑いました。まるで百年が、ほんの一瞬の昼寝だったかのように。

第三話

白雪姫

鏡よ、鏡。王妃はよく、魔法の鏡にそう問いかけていました。「この国でいちばん美しいのは誰?」鏡はずっと「王妃さまです」と答えていました。

でも白雪姫が七歳になったある朝、鏡はこう答えたのです。「白雪姫でございます」

王妃の顔が曇りました。それから、険しくなりました。白雪姫は黒い森に連れていかれそうになりましたが、使用人の男は心が痛んで、姫を逃がしてやりました。

白雪姫 — Logan Marshall 挿絵(1917年・パブリックドメイン)
挿絵 — Logan Marshall 編(1917年・パブリックドメイン)

姫は深い森をひとり走り続け、倒れそうになった頃、小さなお家に辿り着きました。七つの小さなベッド、七つの小さなお椀、七つの小さな椅子。七人の小人たちの家でした。

小人たちは旅から帰ってきて、玄関を開けると、小さなベッドで眠る白雪姫を見つけました。「かわいそうに。ここにいていいよ」

白雪姫は小人たちと楽しく暮らしはじめました。でも遠くの国から、王妃が老婆に変装してやってきました。手には赤くて艶やかなりんご。

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「おいしそう……」と白雪姫は言いました。一口食べた瞬間、姫は倒れました。小人たちは泣きながら、ガラスの棺に姫を寝かせました。

ある日、旅の王子様が森を通りかかりました。棺の中で眠る姫を見て、王子様は胸が苦しくなりました。「一目でいいから、連れていかせてほしい」

棺を動かした拍子に、白雪姫の口からりんごの欠片がこぼれ落ちました。姫がゆっくりと目を開けると、王子様がいました。

「ここはどこ?」と姫は言いました。「ここは森の中。でもこれからは、お城の中ですよ」七人の小人たちは、姫を見送りながら手を振りました。白雪姫も、ずっと手を振り返しました。いつまでも、いつまでも。

第四話

赤ずきんちゃん

ある村に、みんなから愛されている女の子がいました。おばあさんが縫ってくれた真っ赤なずきんがトレードマークで、みんなは「赤ずきん」と呼んでいました。

ある日、お母さんが言いました。「おばあさんが風邪をひいたから、このバスケットを持っていってちょうだい。ただし、森の中では寄り道しないこと、見知らぬ人と話してはいけないよ」

狼が赤ずきんに挨拶して走り去る — Logan Marshall 挿絵(1917年・パブリックドメイン)
挿絵 — Logan Marshall 編(1917年・パブリックドメイン)

赤ずきんは「わかった!」と元気よく返事をして、バスケットを提げて出かけました。森はきれいでした。木漏れ日がさして、野の花が風に揺れていました。

すると、大きな狼が現れました。「やあ、かわいい子。どこへいくの?」赤ずきんは——話してしまいました。森の奥のおばあさんの家のことを、ぜんぶ。

🐺

狼は先回りして、おばあさんの家へ急ぎました。おばあさんを押し入れに閉じ込め、ベッドに潜り込みました。

「おばあさん、なんて大きなお耳なの」「よく聞こえるためだよ」「なんて大きなお目目なの」「よく見えるためだよ」「なんて大きなお口なの」「お前を食べるためだよ!」

狼が飛びかかろうとした瞬間、窓の外から猟師が通りかかりました。狼は慌てて窓から逃げていきました。

三人はテーブルを囲んで、赤ずきんが持ってきたパンとバターとジャムを食べました。家への帰り道、赤ずきんはひとり考えました。「次は、ちゃんとお母さんの言いつけを守ろう」

第五話

ジャックと豆の木

ジャックはお母さんと二人で、貧しい暮らしをしていました。頼りは一頭の牝牛だけ。でもその牛も、もう乳が出なくなってしまいました。

「ジャック、牛を市場で売っておいで」ジャックは牛を引いて出かけましたが、道の途中で不思議なおじいさんに出会いました。「その牛と、この豆を取り替えようじゃないか。魔法の豆だよ」

ジャックと豆の木 — Logan Marshall 挿絵(1917年・パブリックドメイン)
挿絵 — Logan Marshall 編(1917年・パブリックドメイン)

ジャックは豆を受け取って家に帰りました。お母さんは怒って豆を窓から投げ捨てました。

翌朝。窓の外に、空まで届く巨大な豆の木が生えていました。ジャックは登りました。ぐんぐん、ぐんぐん。雲を抜けると、そこには大きなお城がありました。

🫘

中には、恐ろしい巨人が住んでいました。「フィーファイフォーファム。イギリス人の匂いがするぞ」

ジャックはすばしこく逃げながら、金の卵を産む鶏を見つけて抱えました。二度目には金のハープを。

巨人が追いかけてきました。ジャックは豆の木を一気に降りると、斧で根元をがんがん叩きました。どすん! と豆の木が倒れ、巨人はそれきりでした。

金の卵を産む鶏のおかげで、ジャックとお母さんは豊かに暮らせるようになりました。金のハープは夜ごと美しい音楽を奏でて、二人をやさしく眠りに誘いました。

第六話

みにくいアヒルの子

夏の日、田舎はとても美しい景色でした。麦は黄色く実り、燕麦は青々と茂り、こうのとりが長い赤い脚で草原を歩いていました。

森に囲まれた深い池のほとりで、一羽のアヒルの母さんが卵を温めていました。卵はなかなか孵らず、母さんはずいぶん長く待っていました。

みにくいアヒルの子 — Marshall編挿絵(1917年・パブリックドメイン)
挿絵 — Logan Marshall 編(1917年・パブリックドメイン)

やがて、コツン、コツンと音がして、卵が次々に割れました。「ぴよぴよ!」小さな頭がひとつ、またひとつと顔を出します。でも、いちばん大きな卵だけは、まだ割れません。

「これは七面鳥の卵かもしれないね」と、通りがかりのおばさんアヒルが言いました。「放っておきなさい」でも母さんはもう少し待つことにしました。

しばらくして、その卵もついに割れました。出てきたのは——大きくて、灰色で、ちっとも可愛くない、ひな鳥でした。

灰色のひなは悲しくなって、こっそり家を出ました。野生のアヒルたちのところへ行っても、「お前は本当に醜いな」と言われるだけでした。冬が来て、池は凍りつきました。

🦆

そして春が来ました。ある日、美しい庭のある池にたどり着くと、そこには白く輝く、優雅な鳥たちが泳いでいました。

覚悟を決めて水に入り、泳いでいくと——水面に映った自分の姿に、目を疑いました。そこにいたのは、灰色の不格好なひなではなく——一羽の美しい白鳥でした。

「見て、新しい白鳥が来たよ! いちばん美しい白鳥だ!」かつて自分をいじめた仲間たちのことを思い出しながら、白鳥は静かに思いました。「醜いアヒルの子だった頃には、こんな幸せが来るなんて、夢にも思わなかった」

第七話

長靴をはいた猫

昔、粉ひきの男が亡くなり、三人の息子に遺したのは、粉ひき小屋と、ロバと、猫だけでした。長男は小屋を、次男はロバをもらいましたが、末っ子に残されたのは猫一匹だけ。

「兄さんたちは真面目に働けばいい。でもぼくは、この猫を食べて、毛皮を売ったら、それでおしまいだ」すると、そばで聞いていた猫が言いました。「長靴を一足と、袋をひとつ用意してくれれば、ぼくがどれほど役に立つか、お見せしましょう」

長靴を履き袋を提げる猫 — Logan Marshall 挿絵(1917年・パブリックドメイン)
挿絵 — Logan Marshall 編(1917年・パブリックドメイン)

猫は長靴を履き、袋を首にかけると、うさぎの巣穴へ出かけていきました。獲物を持って、王様の城へ向かいます。「陛下、わたしの主人、カラバ侯爵より献上いたします」

ある日、猫は王様がお姫様と一緒に川辺を馬車でお通りになると聞きつけました。末っ子が川に入ると、猫は彼の服を隠してしまいました。「大変です! カラバ侯爵が溺れてしまいます!」

🥾

王様はすぐに立派な服を届けさせ、末っ子はそれを着ると、たいそう凜々しい若者に見えました。お姫様はひと目で恋に落ちてしまいました。

猫は道々の草刈りたちに言いました。「この草原はカラバ侯爵様のものだと王様に申し上げなさい。」やがて猫は、この土地の本当の持ち主である恐ろしい鬼の城にたどり着きました。

「では、ねずみのような小さな生き物にもなれますか?」「もちろんだとも」鬼が小さなねずみに変わった、その瞬間——猫は素早く飛びかかり、ぺろりと食べてしまいました。

「カラバ侯爵様の城へ、ようこそ」王様はこの立派な城と、若者の人柄にすっかり満足し、お姫様との結婚を許しました。猫はそれからは自分の楽しみのためだけに、ねずみを追いかけて過ごしたということです。

第八話

三びきのくま

森の中の小さな家に、三びきのくまが住んでいました。ちいさな、ちいさな、ちいさなくま。ちゅうくらいのくま。それから、おおきな、おおきな、おおきなくま。

三びきはそれぞれ、自分の大きさに合ったお椀と、椅子と、ベッドを持っていました。ある朝、三びきはおかゆを作りましたが、熱すぎたので、冷める間に森へ散歩に出かけました。

おかゆを前にした三びきのくま — Logan Marshall 挿絵(1917年・パブリックドメイン)
挿絵 — Logan Marshall 編(1917年・パブリックドメイン)

そこへ、一人のおばあさんがやってきました。窓からのぞき、鍵穴からのぞき、誰もいないのを確かめると、そっと中へ入りました。

おばあさんはまず、おおきなくまのおかゆを味見しました。「熱すぎるわ」次に、ちゅうくらいのくまのおかゆを味見しました。「冷たすぎるわ」最後に、ちいさなくまのおかゆを味見すると——「ちょうどいい!」

🐻

椅子もベッドも同じでした。ちいさな椅子は「ちょうどいい!」——けれど座った途端、底が抜けてしまいました。ちいさなベッドは「ちょうどいい!」——おばあさんはそこにもぐりこむと、あっという間に眠ってしまいました。

「だれかが、わたしのおかゆを食べたね!」「だれかが、わたしのおかゆを食べたわ!」「だれかが、ぼくのおかゆを食べて、ぜんぶなくなっちゃった!」

そして、ちいさなくまが、いちばんちいさな声で叫びました。「だれかが、ぼくのベッドに寝てる——あ、まだいる!」

その声があまりに鋭かったので、おばあさんはぱっと目を覚ましました。三びきのくまを見るなり、反対側からベッドを転げ落ち、窓から飛び出して、森の中を一目散に逃げていきました。それから、三びきのくまが、おばあさんの姿を見ることは二度となかったということです。

🕯️ 底本:Logan Marshall 編 Favorite Fairy Tales(1917年)/パブリックドメイン
挿絵:Project Gutenberg #20748(パブリックドメイン)
本テキストは原文をもとにしたオリジナル日本語意訳・再話です
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