第一話
シンデレラ
むかしむかし、ある国に、心だけがきらきらしている娘がいました。
名前はエラ。でも意地悪な継母と義姉たちは、いつも彼女を暖炉のそばで働かせていたので、みんなはいつしか「シンデレラ」と呼ぶようになりました。灰かぶり、という意味です。
エラは灰まみれでも、文句ひとつ言いませんでした。
歌を歌いながら床を磨き、小鳥と話しながら洗い物をしました。心が綺麗な人は、きっとそういうものなのです。
ある日、お城から招待状が届きました。
「王子様の舞踏会へ、国中の娘たちをご招待申し上げます」
継母と義姉たちは大喜びで支度をはじめ、エラには「あなたは留守番よ」と言い残して馬車に乗っていきました。
エラは一人、暖炉の前に座ってため息をつきました。
するとそこへ——ぽわんと光が灯って、やさしいおばあさんが現れました。魔法使いのおばあさんです。
「泣かないで、エラ。あなたも舞踏会へいきましょう」
庭のかぼちゃが立派な馬車になりました。ネズミが白馬に、トカゲが従者に。そしてエラのぼろぼろの服が——ため息が出るほど美しいドレスに変わりました。足には、ガラスの靴。
「ただし、真夜中の鐘が鳴ったら帰ってきなさい。その前に、ね」
お城に着くと、誰もがエラに目を奪われました。王子様も、階段の上からエラを見て、そっと胸に手を当てました。二人はひと晩中踊りました。月が高く昇るほど、会話はとまりませんでした。
でも——ゴーン、と鐘が鳴り始めました。
エラは我に返って走り出しました。階段を駆け降りる拍子に、ガラスの靴が片方脱げてしまいましたが、振り返る時間はありません。
翌朝、王子様は国中を歩いてガラスの靴を探しました。
そしてエラの足にそっと靴をはめたとき、靴はぴったりと合いました。
「あなたでした」と王子様は言いました。
「はい」とエラは言いました。
継母も義姉たちも、ぽかんと口を開けていました。
エラは彼女たちをちらりと見て、にこりと微笑みました。意地悪を返さない。それが、エラの一番の魔法でした。