← 書棚へ戻る Timeless Library

タイムレス・ライブラリー

お気に入りの童話集

Favourite Fairy Tales — inspired by Logan Marshall, 1917

昔話の、やさしい再話

底本:Logan Marshall 編 Favorite Fairy Tales(1917年)
挿絵:Project Gutenberg #20748(パブリックドメイン)
日本語テキスト:オリジナル意訳・再話

↓ スクロールして物語をめくる

シンデレラ — Logan Marshall 挿絵(1917年・パブリックドメイン)

第一話

シンデレラ

むかしむかし、ある国に、心だけがきらきらしている娘がいました。

名前はエラ。でも意地悪な継母と義姉たちは、いつも彼女を暖炉のそばで働かせていたので、みんなはいつしか「シンデレラ」と呼ぶようになりました。灰かぶり、という意味です。

エラは灰まみれでも、文句ひとつ言いませんでした。

歌を歌いながら床を磨き、小鳥と話しながら洗い物をしました。心が綺麗な人は、きっとそういうものなのです。

ある日、お城から招待状が届きました。

「王子様の舞踏会へ、国中の娘たちをご招待申し上げます」

継母と義姉たちは大喜びで支度をはじめ、エラには「あなたは留守番よ」と言い残して馬車に乗っていきました。

エラは一人、暖炉の前に座ってため息をつきました。

するとそこへ——ぽわんと光が灯って、やさしいおばあさんが現れました。魔法使いのおばあさんです。

「泣かないで、エラ。あなたも舞踏会へいきましょう」

庭のかぼちゃが立派な馬車になりました。ネズミが白馬に、トカゲが従者に。そしてエラのぼろぼろの服が——ため息が出るほど美しいドレスに変わりました。足には、ガラスの靴。

「ただし、真夜中の鐘が鳴ったら帰ってきなさい。その前に、ね」

お城に着くと、誰もがエラに目を奪われました。王子様も、階段の上からエラを見て、そっと胸に手を当てました。二人はひと晩中踊りました。月が高く昇るほど、会話はとまりませんでした。

でも——ゴーン、と鐘が鳴り始めました。

エラは我に返って走り出しました。階段を駆け降りる拍子に、ガラスの靴が片方脱げてしまいましたが、振り返る時間はありません。

翌朝、王子様は国中を歩いてガラスの靴を探しました。

そしてエラの足にそっと靴をはめたとき、靴はぴったりと合いました。

「あなたでした」と王子様は言いました。

「はい」とエラは言いました。

継母も義姉たちも、ぽかんと口を開けていました。

エラは彼女たちをちらりと見て、にこりと微笑みました。意地悪を返さない。それが、エラの一番の魔法でした。

いばら姫 — Logan Marshall 挿絵(1917年・パブリックドメイン)

第二話

いばら姫

王さまと王妃さまに、長い間待ち望まれた赤ちゃんが生まれました。

薔薇の花びらのようなほっぺの女の子で、みんなはすぐに夢中になりました。

お祝いの宴に、国中の妖精たちが招かれました。

「美しく育ちますように」「心やさしくなりますように」「歌が上手になりますように」——妖精たちは次々と贈り物をしていきました。

ところが宴のまっ最中、誰も招かなかった年老いた妖精が突然現れたのです。その妖精は呪いを口にしました。

「この娘は、十五になったとき、糸巻き棒の針に指を刺されて——死ぬだろう」

王さまは国中の糸巻き棒を集めて燃やしました。それでも心配でたまりませんでした。

でも、まだ贈り物をしていなかった若い妖精が、こっそり近づいてきて言いました。

「死ぬ、は変えられません。でも——眠り、に変えることならできます。百年の眠り。そして、愛のくちづけで目覚める眠りに」

年月は流れ、姫は十五歳になりました。

お城の古い塔で、糸巻き棒を見つけて触れた瞬間——姫は深い眠りに落ちました。

お城の人たちも眠りました。庭師も、料理人も、ねこも、犬も。

茨が城を取り囲み、やがてお城は緑の壁の中に消えていきました。

百年が経ちました。

ある王子様が、深い森の噂を聞きました。

茨をかき分けて進むと、眠ったままのお城がありました。廊下には眠る兵士、台所には眠る料理人、薔薇の寝台には眠る姫。

王子様はそっとひざまずいて、姫のほっぺに口づけをしました。

姫がゆっくりと目を開けると、そこには見知らぬ王子様がいました。

でも、姫はなぜか少しも怖くありませんでした。

「百年も待ってくれたの?」と姫は言いました。

「ちょっと遅れてしまいました」と王子様は笑いました。

お城じゅうが目を覚ましました。

料理人は続きの料理を始め、ねこはのびをして、小鳥はまた歌い出しました。

まるで百年が、ほんの一瞬の昼寝だったかのように。

白雪姫 — Logan Marshall 挿絵(1917年・パブリックドメイン)

第三話

白雪姫

鏡よ、鏡。

王妃はよく、魔法の鏡にそう問いかけていました。

「この国でいちばん美しいのは誰?」

鏡はずっと「王妃さまです」と答えていました。

でも白雪姫が七歳になったある朝、鏡はこう答えたのです。

「白雪姫でございます」

王妃の顔が曇りました。それから、険しくなりました。

白雪姫は黒い森に連れていかれそうになりましたが、使用人の男は心が痛んで、姫を逃がしてやりました。

姫は深い森をひとり走り続け、倒れそうになった頃、小さなお家に辿り着きました。七つの小さなベッド、七つの小さなお椀、七つの小さな椅子。

七人の小人たちの家でした。

小人たちは旅から帰ってきて、玄関を開けると、小さなベッドで眠る白雪姫を見つけました。

「かわいそうに。ここにいていいよ」

白雪姫は小人たちと楽しく暮らしはじめました。でも遠くの国から、王妃が老婆に変装してやってきました。手には赤くて艶やかなりんご。

「おいしそう……」と白雪姫は言いました。

一口食べた瞬間、姫は倒れました。

小人たちは泣きながら、ガラスの棺に姫を寝かせました。

ある日、旅の王子様が森を通りかかりました。

棺の中で眠る姫を見て、王子様は胸が苦しくなりました。

「一目でいいから、連れていかせてほしい」

棺を動かした拍子に、白雪姫の口からりんごの欠片がこぼれ落ちました。

姫がゆっくりと目を開けると、王子様がいました。

「ここはどこ?」と姫は言いました。

「ここは森の中。でもこれからは、お城の中ですよ」

七人の小人たちは、姫を見送りながら手を振りました。

白雪姫も、ずっと手を振り返しました。いつまでも、いつまでも。

赤ずきんちゃん — Logan Marshall 挿絵(1917年・Gutenberg page_202)

第四話

赤ずきんちゃん

ある村に、みんなから愛されている女の子がいました。

おばあさんが縫ってくれた真っ赤なずきんがトレードマークで、みんなは「赤ずきん」と呼んでいました。

ある日、お母さんが言いました。

「おばあさんが風邪をひいたから、このバスケットを持っていってちらい。パンとバター、それとジャムもね。ただし、森の中では寄り道しないこと、見知らぬ人と話してはいけないよ」

赤ずきんは「わかった!」と元気よく返事をして、バスケットを提げて出かけました。

森はきれいでした。木漏れ日がさして、野の花が風に揺れていました。

すると、大きな狼が現れました。

「やあ、かわいい子。どこへいくの?」

赤ずきんは——話してしまいました。森の奥のおばあさんの家のことを、ぜんぶ。

狼は先回りして、おばあさんの家へ急ぎました。

おばあさんを押し入れに閉じ込め、ベッドに潜り込みました。

しばらくして赤ずきんが到着しました。

「おばあさん、なんて大きなお耳なの」

「よく聞こえるためだよ」

「なんて大きなお目目なの」

「よく見えるためだよ」

「なんて大きなお口なの」

「お前を食べるためだよ!」

狼が飛びかかろうとした瞬間、窓の外から猟師が通りかかりました。

家の中の物音を聞いて、勢いよく扉を開けました。

狼は慌てて窓から逃げていきました。

猟師が押し入れを開けると、おばあさんが無事でした。

三人はテーブルを囲んで、赤ずきんが持ってきたパンとバターとジャムを食べました。

家に帰り道、赤ずきんはひとり考えました。

「次は、ちゃんとお母さんの言いつけを守ろう」

森の道はあいかわらずきれいでしたが、今度は真っすぐ、寄り道なしで歩きました。

ジャックと豆の木 — Logan Marshall 挿絵(1917年・Gutenberg page_158)

第五話

ジャックと豆の木

ジャックはお母さんと二人で、貧しい暮らしをしていました。

頼りは一頭の牝牛だけ。でもその牛も、もう乳が出なくなってしまいました。

「ジャック、牛を市場で売っておいで」

ジャックは牛を引いて出かけましたが、道の途中で不思議なおじいさんに出会いました。

「その牛と、この豆を取り替えようじゃないか。魔法の豆だよ」

ジャックは豆を受け取って家に帰りました。

お母さんは怒って豆を窓から投げ捨てました。

翌朝。

窓の外に、空まで届く巨大な豆の木が生えていました。

ジャックは登りました。ぐんぐん、ぐんぐん。

雲を抜けると、そこには大きなお城がありました。

中には、恐ろしい巨人が住んでいました。

「フィーファイフォーファム。イギリス人の匂いがするぞ」

ジャックはすばしこく逃げながら、金の卵を産む鶏を見つけて抱えました。

二度目には金のハープを。

巨人が追いかけてきました。ジャックは豆の木を一気に降りると、斧で根元をがんがん叩きました。

どすん! と豆の木が倒れ、巨人はそれきりでした。

金の卵を産む鶏のおかげで、ジャックとお母さんは豊かに暮らせるようになりました。

金のハープは夜ごと美しい音楽を奏でて、二人をやさしく眠りに誘いました。

終わりに

どの話にも、魔法がある

どの話にも、勇気があります。

どの話にも、やさしさがあります。

そして——少しだけ、魔法があります。

百年経っても、二百年経っても、昔話が語り継がれるのは、きっとそのせいです。

どんな時代でも、人の心には変わらないものがあるから。

さあ、本を閉じたら、ゆっくりおやすみなさい。

明日もまた、あなたの物語が始まります。

(おわり)