大正・昭和の文壇を深く耕した大御所、菊池寛。その筆は、華やかな文壇の表層だけを描くのではありません。姉夫婦を惨殺した強盗への憤り、そして死刑を「天国への招待状」として喜び迎える犯人の姿に向けた、世の不条理への毅然とした抗議——『ある抗議書』は、文藝春秋を創刊した同じ魂が、法と救済の矛盾を正面から叩きつけた書簡です。1919年、中央公論に現れたこの一页は、私たちに「美しい時代」だけでなく、正義が傷ついた空気も確かに存在したことを刻み込みます。