# さらばProject Seven(四)——九十三ページの引き継ぎ式
zipを解凍した瞬間、手が止まった。
miyasakomasaaki.comは、トップページひとつの案件だと思っていた。ところが蓋を開けてみれば、`works`が六十五ページ、`gallery`、`profile`、`publications`、`gihou`、`archive`、`clone`——それぞれのフォルダに個別のP7ウィジェットが埋め込まれ、合計すると九十三ページ。使われているPVIIプラグインは、数えて約二十種。Panache、Harmony Grid、Drop Down Magic、Accordion Panel Magic、Background Animator Magic、Art Gallery Magic……名前を並べているだけで、あの頃の自分がどれほど夢中でこの拡張機能たちを買い集めていたかを思い出す。
一つのサイトというより、一つの時代そのものが、フォルダの中に眠っていた。
## 何を捨て、何を残すか
移築の方針を決めるとき、まず迷ったのはここだった。ゼロから作り直すのは簡単だ。だが、それでは長年このサイトを支えてきたデザインの記憶まで消してしまう。
答えは、CSSは残す、ということだった。Project Sevenが組み上げたレイアウトとビジュアルの骨格——あの独特の余白の取り方や質感——はそのまま活かす。捨てるのは、jQueryに依存した動作部分だけ。見た目は継承し、中身だけを現代化する。これは移築というより、古い家の柱と梁を残して、配線だけを引き直す作業に近かった。
代替の動作部分には、AstroとGSAP、そしてScrollTriggerを選んだ。Astroはデフォルトでアイランド的にJSを読み込むため、`.astro`ファイル内の`<script>`タグ、あるいは独立した`.ts`ファイルにGSAPロジックを書けば、それだけでビルド時にバンドルされる。`client:load`のような指定すら要らない身軽さが、今日はありがたかった。
## Cursorとの対話、二十種のプラグインを解く
だが、CSSを残すと決めても、動作部分の再現には元のロジックを正確に読み解く必要がある。ここで頼ったのが、Cursorだった。
P7の各プラグインが吐き出すコードを一つずつCursorに読み込ませ、何が起きているのかを精査してもらう。ドロップダウンの開閉タイミング、アコーディオンの展開ロジック、背景アニメーションのイージング——それらを一つひとつ言語化し、GSAPのタイムラインとScrollTriggerのトリガー条件に置き換えていく。この作業を、`works`から`gihou`まで、九十三ページすべてに対して繰り返した。
一日でここまでたどり着けたのは、正直なところ自分でも驚いている。だが、すんなり進んだわけではない。
## トップページという難所
一番手こずったのは、皮肉にもトップページだった。
サブページのプラグインは、役割が一つに絞られている分、Cursorとのやり取りも一往復か二往復で着地することが多かった。ところがトップページは、Panache、Harmony Grid、Background Animator Magicといった複数のギミックが層になって重なっている。ある要素のスクロールタイミングを直すと、別の要素のフェードインがずれる。ずれを直すと、今度はパララックスの速度が合わなくなる。
Cursorとの対話は、何度も往復した。「ここの動きだけ再現してほしい」「いや、この順序で発火してほしい」——指示を出しては結果を見て、また指示を出す。まるで、一つのオーケストラの各パートに、順番に楽器を持ち替えてもらっているような感覚だった。P7が長い年月をかけて積み重ねてきた「見せ方の呼吸」は、一朝一夕には解けない密度を持っていたのだと思う。
それでも、最後にすべてのタイミングが噛み合った瞬間、画面の中でトップページが息を吹き返した。あの感覚は、今日一日の作業の中でいちばん忘れがたい。
## マクロメディアの記憶
作業の合間、ふと手が止まる瞬間があった。九十三個のHTMLファイルを一つずつ開きながら、頭の片隅に浮かんでいたのは、もっと遠い記憶だった。
Dreamweaverと初めて出会ったのは、まだ「Adobe」ではなく「Macromedia」を名乗っていた頃のことだ。あの独特の水色のアイコン、Fireworksと並んで動いていたインターフェース。何もかもが手探りで、コーディングという行為そのものが新しい発見だった時代。
その後、書店の片隅でProject Sevenの解説本を見つけた。手に取ってページをめくると、巻末にCD-ROMが挟まっていた。あのディスクを自宅のパソコンに入れた瞬間の高揚感は、今でも覚えている。ドロップダウンメニューが、アコーディオンが、パララックスが、自分の手の中で動き出す。それは魔法のように思えた。
あれから幾つのサイトを、このプラグイン群で組み上げてきただろう。miyasakomasaaki.comは、その積み重ねの最も豊かな結晶の一つだった。今日、GSAPのタイムラインを一本ずつ組みながら向き合っていたのは、単なるレガシーコードではなく、あの高揚感そのものだったのかもしれない。
## 九十三ページの先に
トップページを含め、九十三ページすべてのギミックをGSAPで再構築し終えたとき、時計を見て少し呆然とした。想像していたより、はるかに骨の折れる一日だった。だが同時に、Project Sevenが積み上げてきたものの豊かさを、これほど正面から味わった日もなかった。
CSSという骨格を残し、動作という筋肉だけを入れ替える——この移築の形が、はたして正解だったのかどうかは、まだわからない。それでも、二十種のプラグインを一つずつ解きほぐしながら、あの頃夢中でCD-ROMをめくっていた自分と、静かに対話していたような気がしている。
次回は、この移築を終えて見えてきたもの——何を得て、何を手放したのかを、書いてみようと思う。