Art Archive • Utamaro
浮世絵
婦女人相十品(ふじんにんそうじゅっぴん)および関連作
煙管を持つ女
本図は、シリーズ「婦女人相十品」を代表する一枚として、第2期——大首絵の黄金時代に成熟した観察と内面描写の系譜に属します。総論の第二期では、人相学的な気品の描き分けと、手に持つ小道具による性格の暗示が徹底されており、湯上がりの一息に託した「江戸の女」の粋が凝縮されています。
『婦女人相十品』特有のズーム鑑賞では、小道具の質感と眉目の情念を中心に据えてください。
煙管(きせる)の柄と煙盆まわり——竹木の柄の継ぎ目、金属口の冴え、指の腹で立てた角度を高精細で追うと、日常的な道具が単なる添え物ではなく、性格の象徴として機能していることが分かります。
眉・目・口元の「情念」——十品の各図がそれぞれ異なる気品を帯びるのと同様、本作の目尻の柔らかさと口の結びは、ふとした戯れと諦念のあいだを暗示します。ポッピンを吹く娘や手紙を読む女と顔立ちを心のなかで対照させると、シリーズ全体の意図が浮かび上がります。
濡れ髪と肌のトーン——湯上がりという設定ゆえ、髪の湿りと肩周りの色の段差がわずかに透けております。雲母摺の地とのコントラストも、あわせてお確かめください。
サティのBGMは、居室内の余韻のように立ち上がります。煙の立ちのぼるように軽やかな線と旋律を、静かに重ねてご鑑賞ください。