Art Archive • Utamaro
浮世絵
婦女人相十品(ふじんにんそうじゅっぴん)および関連作
ポッピンを吹く娘(ポッピンを吹く女)
Young Lady Blowing on a Poppin
作者は誰?
喜多川歌麿(きたがわ うたまろ、1753〜1806)。江戸時代後期を代表する浮世絵師で、大首絵(おおくびえ)の黄金期に美人画の内面描写を極めた作家として知られます。
どんな作品?(解説)
通称「ポッピンを吹く女」、別名「ポッピンを吹く娘」「ビードロを吹く娘」として親しまれる大首絵です。シリーズ『婦女人相十品』の一図で、寛政前期(1790年代前半)に、顔と胸元へ切り取った様式が成熟した時期の作品群に属します。
ポッピン(通称ビードロ)は、薄いガラスの玩具で、口で吹くと小さな音が鳴る江戸の遊び道具です。ぽっぺんを吹く女、ビードロを吹く女と表記されることもありますが、いずれも本図を指す通称として検索されています。
特徴・見どころ
- 雲母摺(きらずり)の地 — 背景の云母が光を返し、顔立ちを引き立てます。
- 極細の線描 — 髪の生え際や、ポッピンをすくう指先の墨線が繊細です。
- 着物の透け感 — 市松模様の重なりと、肌との境界まで高精細画像で辿れます。
鑑賞用画像はメトロポリタン美術館所蔵のパブリックドメインデータをもとにしています。
本図は、喜多川歌麿の黄金時代である第2期——大首絵の黄金時代(寛政前期・1790年代前半)を代表する傑作の一つです。全身像中心の美人画から、顔と胸元へ大胆に切り取る大首絵へと様式を転換した時期の到達点が、ここに静かに示されています。メインサイトの作者紹介で述べた「時代とともに進化する『美』の変遷」のうち、蔦屋重三郎との協業が花開いた第二期に位置づけられ、表情とわずかな仕草だけで内面の愛らしさを語るという、歌麿の観察眼の粋を一枚に集約しています。
本アーカイブの見どころは、高精細画像へ繰り返しズームしながら、次の三点を丁寧に追うことにあります。
雲母摺(きらずり)の煌めき——背景は、鈍く、しかし確かに光を返す質感で仕上げられています。デジタルアーカイブならではの解像度であれば、地の肌理と雲母の粒が織りなす微妙な輝きの差まで辿れます。拡大したうえで画面を少し傾け、反射の変化を楽しむと、摺師の意図がより身近に感じられるでしょう。
極細の線描——髪の生え際を縁取る毛束の線、ポッピン(硝子の玩具)をすくい上げる指先の墨線は、いずれも極めて繊細です。天明期の写生で鍛えた眼と筆致が、大首絵において「内面の気配」へと昇華された証とお読みください。最高倍率で線の起筆と止めを見比べると、修練の深さがひとつひとつ判ります。
着物の透け感——身につけた市松模様の着物では、微細な色の重なりと、下の色がわずかに透けて見えるような摺り分けが、軽やかな衣の体積を生んでいます。柄の区画の境目、濃淡の階調、肌との境界までズームでたどると、重ね摺りの美しさが立ち上がります。
本展示空間では、エリック・サティの旋律を「家具の音楽」の静謐な情趣として添えています。サティの旋律とともに、江戸の粋がここに到達した極致を、音と併せて静かにご鑑賞ください。
よくある質問
ポッピンを吹く女の作者は誰?
江戸時代後期の浮世絵師・喜多川歌麿(きたがわ うたまろ)です。
ポッピンを吹く女はいつの作品?
寛政前期(1790年代前半)の大首絵です。シリーズ『婦女人相十品』(ふじんにんそうじゅっぴん)の一図として知られています。
「ポッピンを吹く娘」「ビードロを吹く女」と同じ作品?
はい。通称「ポッピンを吹く女」「ポッピンを吹く娘」「ビードロ(硝子)を吹く女」など、同じ一枚を指すことが多い別名です。
ポッピン(ビードロ)とは?
薄いガラスでできた江戸時代の玩具で、口で吹くと「ポッピン」「ポペン」と音が鳴るものです。本図では娘がその玩具を吹く仕草が描かれています。
高精細で見られる?
当ページではメトロポリタン美術館所蔵のパブリックドメイン画像を、鑑賞用に大きく表示しています。